人形師が捧げる人形への愛

 

シュナイゼルの泣くさまは美しいが作り物のようだ。

すべらかな陶器で出来た仮面のような白い頬を滑り落ちてはたりはたりと落下していく涙、と言われる水。

まるで歌劇の中で女優が流す空涙のように何処までも醜悪さのない、ただただ美しいだけの上品な泣き顔。

哀しいという表情をしながらもやはりそれは何処までも擬似的でまるで温度が伝わってこない。それは彼が表すあらゆる感情の共通項であり、やはり彼は舞台の上で己の役を演じるだけの人形のようだ。

それは真実には彼の中にこの世のあらゆる事象が届いていないと言う事であるのかもしれない。

浮世離れして美しい彼に興味を持ったのはそんな無機質さに心を惹かれたからで、その後の付き合いでやはりその思いを強めたからだ。

彼の見せる激情も欲望も熱をもって汗ばむ膚の感触もしっているが、やはりどこかしらそれは希薄で、うすっぺらい。

さて、本当に彼は人間なのかと不思議に思って至極真面目に尋ねたある日、彼もまた至極真面目に考え込んでわからないと答えを返した。

「そうだな、生物学的には私は正しく人間でどこもかしこも有機物で作られた血と肉の塊に過ぎないが、その精神はと言えばどうなのだろう。弟や妹を愛しく思うし美しい音楽、絵画、食事を好ましいと思うが、それに執着しているかと言われると否としか答えようが無い。狂乱するほどのなにかというものを持った事がないんだよ、ロイド」

そう言って微笑む彼はやはり美しく人形じみて、彼の感情は通り一遍等にプログラミングされただけのものなのだなと深く納得した。

ロイドの情熱はナイトメアフレーム、美しく強く残虐な機械人形に捧げられている。

今も昔も変わらないし、それはシュナイゼルと言う至上の主を得た今も変わらない。

未来永劫ロイドはそれを愛し続ける。

 

「例えばさぁ、僕はランスロットを愛してる。うんそれはもう熱烈に強烈にいっそランスロット以外はどうでも言いと言える位にはね愛しちゃってる。でもねぇ、それ以上に僕はあの人を愛してる。何故かわかるかぁい?」

 

困ったように首を傾げて微笑むパーツに、ロイドは満面に笑みを佩いて告白した。

 

「それはあの人がランスロット以上に美しい最高の機能を持つお人形(機械)だからだよ」

 

ロイドの主は彼が目指す完璧なる人形の映し身だ。

だからロイドはランスロットを愛するのと同じようにシュナイゼルを愛して、そんな理想そのものを体現したかの皇子のために、彼そっくりの最高の人形(ナイトメアフレーム)を生み出すのが今のところの目標であった。

 

 

 

(だぁって、一人は寂しいでしょ?)